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「……さてと。じゃあ僕はここで失礼するよ。不気味な輩が僕のことを、さっきからずっと睨みつけているしね?」
実にスッキリとした晴れがましい表情で、ベンチから颯爽と立ち上がる廉さん。
でも………
「えっ!?輩って……」
私は慌てて廉さんの顔を見上げた。
そんな私を気にも止めず廉さんは建物の物陰に身を潜めているだろう人物に声をかけた。
「………竜、そこにいるんだろ?出てこいよ」
「えっ!?竜!?」
私はベンチから立ち上がると……廉さんの視線の先を追った。
すると。
物陰にひっそりと腕を組んだまま建物の壁に寄り掛かっていた竜の姿を捕らえる。
「チッ、気付いてたのかよ……」
竜は吐き捨てるように呟くと……ゆっくり私達のいる中庭へと歩みを進めてきた。
「はぁ……僕も堕ちたもんだな。
竜に哀れみを受けるなんて……」
廉さんは全てを悟ったように……静かに俯いた。
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