act.28

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「あのぉ……まったく話が見えないんですけど……?」 何だかとっても満足げのお2人に私は堪らなくなって声を掛けた。 しかし……。 「杏。これは男同士の話だ」 「そうそう。竜が杏ちゃんの妖艶なパーティードレスを拝みたいばっかりに、わざわざこんな仮面舞踏会を主催したとは……僕、口が裂けても言えないよ」 わざとらしく¨あ、しまった!¨と口元を両手で押さえ、ふざけてみせた廉さん。 「ば、馬鹿っ。ちげーよ!」 慌てふためいて真っ赤になる竜。 2人は、まるで仲の良い兄弟のようにじゃれ始めた。 「………ふ~ん。何か竜と廉さんって……怪しい」 私はちょっとだけ男同士の友情に嫉妬してしまったりなんかして……。 「バーカ。勘違いすんなって杏。 ………それともヤキモチか?」 竜はイジワルそうな瞳を輝かせ、私のもとへと一歩また一歩と歩み寄ってくる。 「ち……違うわよっ!」 竜の圧力というか勢いに押され、後退りしてしまう私。 「心配すんなって。今日のこの余興が済んだら思う存分お前を可愛がってやるからよ?」 「ひ…!?え、遠慮しときます」 竜は逃げようとしていた私の腕を掴むと、強引に自分の胸の中に私を押し込めた。 「おいおい、竜。僕の可愛い妹に手荒な真似はよしてくれ。それに……」 廉さんは竜の胸の中に収められている私の頭を軽く撫でると……。 「…杏ちゃん。僕はますます君が気に入ったよ。 だから改めて¨兄¨としてではなく¨一人の男¨として君を見守ることに決めたよ」 「あ゛あ゛っ!?」 竜が威嚇するような声をあげた。 「今は竜に気持ちがあるかもしれないけど…… 人の気持ちに¨絶対¨はないからねぇ」 絡み付く竜の腕の中から少しだけ振り向くと…… そこには……スッキリとした表情で満面の笑みを携えた 今までに見たこともないような…明るい廉さんの笑顔があった。 そして 「杏ちゃん。竜に飽きたら、いつでも僕のところへおいでね」 そう言ってまた私の頭を優しく撫でると……廉さんは舞踏会の会場の人混みの中へと消えて行った。
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