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「あのぉ……まったく話が見えないんですけど……?」
何だかとっても満足げのお2人に私は堪らなくなって声を掛けた。
しかし……。
「杏。これは男同士の話だ」
「そうそう。竜が杏ちゃんの妖艶なパーティードレスを拝みたいばっかりに、わざわざこんな仮面舞踏会を主催したとは……僕、口が裂けても言えないよ」
わざとらしく¨あ、しまった!¨と口元を両手で押さえ、ふざけてみせた廉さん。
「ば、馬鹿っ。ちげーよ!」
慌てふためいて真っ赤になる竜。
2人は、まるで仲の良い兄弟のようにじゃれ始めた。
「………ふ~ん。何か竜と廉さんって……怪しい」
私はちょっとだけ男同士の友情に嫉妬してしまったりなんかして……。
「バーカ。勘違いすんなって杏。
………それともヤキモチか?」
竜はイジワルそうな瞳を輝かせ、私のもとへと一歩また一歩と歩み寄ってくる。
「ち……違うわよっ!」
竜の圧力というか勢いに押され、後退りしてしまう私。
「心配すんなって。今日のこの余興が済んだら思う存分お前を可愛がってやるからよ?」
「ひ…!?え、遠慮しときます」
竜は逃げようとしていた私の腕を掴むと、強引に自分の胸の中に私を押し込めた。
「おいおい、竜。僕の可愛い妹に手荒な真似はよしてくれ。それに……」
廉さんは竜の胸の中に収められている私の頭を軽く撫でると……。
「…杏ちゃん。僕はますます君が気に入ったよ。
だから改めて¨兄¨としてではなく¨一人の男¨として君を見守ることに決めたよ」
「あ゛あ゛っ!?」
竜が威嚇するような声をあげた。
「今は竜に気持ちがあるかもしれないけど……
人の気持ちに¨絶対¨はないからねぇ」
絡み付く竜の腕の中から少しだけ振り向くと……
そこには……スッキリとした表情で満面の笑みを携えた
今までに見たこともないような…明るい廉さんの笑顔があった。
そして
「杏ちゃん。竜に飽きたら、いつでも僕のところへおいでね」
そう言ってまた私の頭を優しく撫でると……廉さんは舞踏会の会場の人混みの中へと消えて行った。
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