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私は強がりだ。
本当は、誰よりも寂しがり屋で、誰よりも臆病者なのだろう。
ケド…何故だろう。
ヒロキの前では、そんな自分を上手く表現出来ない。
ヒロキは無口な方だが、弁は達者で頭の回転が良い分、私はいつも会話の後味が悪くなってしまう。
チエちゃんの件も、最後はヒロキの考えの方向で事が進んで行ってしまった。
ああ言ったら、こう言われる…そう言ったら、こう言われる。
いつしか私の中で、ヒロキとの会話のシナリオが出来上がってしまっていて、太刀打ち出来ない自分自身に諦めのようなものを感じていた。
ヒロキは優しい。
真面目で、信頼出来る人間だ。
ケド…私たち夫婦には、価値観のズレがある。
ヒロキはどう感じているのかは分からないが、少なくとも私はヒロキに本音を明かせない。
否定されるのが…恐いから…。
だから…強がって笑うしかないんだ。
余裕のフリして。
陰では、顔も知らない誰かとメールをして寂しさを紛らわせる。
そして…ヒロキの前では何事もないように、妻の顔を演じている最低で惨めな私。
こんな私はそのうちきっと…天罰が下るだろう。
それでも…今の自分自身を保てる方法は、こんな手段しかなかった。
現実から逃げることしか…。
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