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「森の中はどこか崩れたかもしれんな。明日行くときは気をつけて行ってくれよ」
「解ってる。ヤスナも今日みたいな無理は止めてくれよ?死んでんのかと思ったぜ」
あれは本当に疲れて寝ただけだと反論するヤスナに、解った解ったと笑いながら言う。
生まれたときに力を吸い取ってしまったのかと思うような華奢な体…。
だからといって、俺がガタイ良いと言う訳じゃ決してないんだが。
体が弱いだけなら構わない。
俺がいくらでも看病する。
だけどヤスナは年々弱ってる気がする。
発作を起こしたように激しく咳き込む背中に手を置くと、
その命の終点が間近に見えたような錯覚を見るときがある。
その度に怖くなる。
ヤスナはある日急にいなくなってしまうんじゃないか。
「…センリ」
「……は」
「どうかしたか」
「あ…いや」
少しは俺もかじってるとはいえ、ヤスナはこの村の唯一の医者だ。
いなくなったら困る。
もう考えるのは辞めよう。
不安になる。
その夜はその俺の不安を揺するように、小さな余震が何度も来た。
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