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激しい雨が屋根を叩く音を、夢心地で聞いていた。
外はまだ暗い。
雨は強くなったり弱くなったりしながら、家に叩きつけた。
その音が心地良くて、俺はまた深く眠った。
ずいぶん経った。
何かの音が遠くから聴こえてくる。
夢が薄れて、それはどんどんはっきりしてきた。
「…ッゲホ…ゴホ…ゴホッ」
「……ヤスナ」
起きてみると、ヤスナが半身を起こして咳き込んでいた。
胸の辺りをひっ掴むように握り締めている。
なるべく音を消そうと思ったのか、立てた膝の上の布団に顔を埋めていた。
「大丈夫か……背中を伸ばして、ゆっくり息を吸うんだ」
「……っが…ゴホッ……はぁっ…はぁ…」
真っ黒な細くて長い髪が、上下する肩に合わせて揺れた。
一体いつから苦しんでいたんだろう。
「そうそう。…水持ってこよう、ちょっと待ってて」
雨はさっきより強く降っているようだった。
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