豪雨【センリ】

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「…凄い雨だな…」 雨に叩かれて戸口がガタガタと鳴っている。 きっと川は溢れている。 森の中の坂も、どこか流れて崩れたかもしれない。 ヤスナは微熱があったのでもう一度寝かせた。 しばらくして静かな寝息を立て始めたとき、今度は風が吹き始めた。 今度は家全体がギシギシ言い始める。 頼むから壊れるのは勘弁してくれよ… 俺はともかくヤスナが死んだらどうすんだよ。 すると意地悪く、屋根の一部が吹っ飛んだ様な音がした。 部屋の中に支障は無いが、かなり大きな音だった。 はぁ……。 「……なんだ今の……」 「あ…屋根が飛んだみたい」 「ついに壊れるか…この家」 ヤスナぁ…平然と言うけど、冗談じゃないかもしれないんだぜ。 ヤスナは少し咳き込むと、 「この雨の中…外に出たりしてる者がいないと助かるんだがな…」 と言った。
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