序章

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淋しい村に、2人の若い医師がいた。 彼らは兄弟で、二十歳を過ぎたばかりだったが、村で唯一の医者だった。 名医として度々、山を2つ越えた所の町へも呼ばれていた父を急に亡くし、 2人は手を取り合って静かに暮らしていた。 兄のヤスナは聡明だった。 だが非常に体が弱く、無理を重ねて寝込むこともしばしばあった。 弟のセンリは丈夫な体を持っていて、こちらもまた俊才だった。 だが主にセンリは森へ入って、薬の材料となるものを集める役目を引き受けていた。 2人は仲が良かった。 病弱なヤスナをセンリは大切にしていた。 お互いの足りない部分はお互いで補った。 センリが集めて来たものをヤスナが的確に調合する。 人里を遠く離れた小さな村の医師としてはもったいないほど、その薬はよく効いた。 平和だった。全てが静かで暖かだった。 森と山に抱かれたこの村で、ヤスナとセンリは名も無い医師として果てるはずだった。 しかしそうはならなかった。 2人の青年はその頃まだ知られていなかったある薬草を通して、 ひとつの悲しい物語と共に長く語り継がれる事となる。 これはその2人の、誰も知らない行く末の話。
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