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その日の天候は何だかおかしかった。
夕方まで暴れ放題だった嵐が弱まると気温が上がり、辺り一面に濃い霧が出た。
ちょっと先も見えない真っ暗な霧の中、センリに近くの泉から清水を汲んできて貰ったが、
どんなに手を尽くしても赤子は声を上げることはなく、時間だけが過ぎた。
そのうち、小さな家の狭い部屋に何人もの大人が長時間いたせいで空気が濁り、
私の方が具合悪くなってきて一度外の空気を吸うために外に出た。
そのとき自分が何を考えていたのかは解らないが、
私はその声も上げない半死の赤子を抱いて外に出た。
きっと誰も止めなかったのは、私が何か考えがあってその行動を取ったからだと思ったんだろう。
多分そのときは意識が朦朧としていて、
十何年生きてる私でも息苦しいんだからこの子は尚更だろうなんて思っていた。
闇にたなびく様子がはっきり見えるほどの濃霧の中に出て、ゆっくりと息を吸う。
湿っぽいけど気温は初冬で、風は随分冷たかった。
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