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少し目眩もしてきた。
夕方頃まで熱は出る吐き気はするで散々だったんだ…
お前は私を殺す気か。
『……いつまでも兎のように黙っていると……この霧の中へ放り出してしまうぞ』
『ヤ…ヤスナ!?』
『…………………ぅ…』
今思えば最低で残酷な事を言ったもんだと思ったが…
その一言が通じたのか、間もなく赤子は弾かれたように泣き出した。
『あっ泣いたっ…ヤスナ、泣いたぜ!!やった!!』
『あぁっ…ありがとうヤスナ先生…本当にありがとう…』
『良かったなー…母親も無事だったし、これで丈夫に育てば安心ですね』
『えぇ…センリ先生も本当にありがとう…もうどうなることかと…』
言葉も出ずに、大泣きする赤子を抱いたまま呆然と立ち尽くすのは自分のみ…。
そのまま父親にその子を渡し、促されるまま家に入る。
家族や手伝いに来ていた村人が喜んでいるのを見て、何だか一気に気が抜けた。
センリに言わせれば…外にいるときは暗くて判らなかったが、私はそのとき冷や汗を流して蒼白だったらしい。
そして母子が助かったのとは逆に、私はその場で気を失ってしまった。
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