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次の日、見慣れない天井をぼうっと眺めながら起きてみると、誰かが私の名前を呼んだ。
半身を起こすとセンリと赤子の父親が来た。
昨日は深夜だったので、まだ赤子の名前が決まってないらしい。
『大丈夫ですかヤスナ先生……息子はあれから大分落ち着きました』
昨日より顔色も良く規則的な呼吸を繰り返す小さな体を渡される。
親以外に抱かれると大抵の子はそれを敏感に感じて泣き出すものだが、
しっかりと目を開いて私の顔を見ているにも関わらず、何の反応もしない。
私はその子を抱いて安心する意味のため息をつきながら、
『全くお前は……霧の中の兎だな……』
と言った。
その後センリと家に帰ってしばらくした後、村人の1人が命名が決まったと知らせに来てくれた。
【霧兎】キリト
からからと笑うセンリの隣で、私は少なからず面食らったのだが…
まぁ丈夫に育てばそれで良いか…と、明かり取りの窓からキリトの家を眺めたのだった。
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