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「森の中が大荒れでさ…雪道を歩くときの金具でもつけないと、とてもじゃなくて」
「そんなに酷いのか」
無理して行かなくても良いよ、危ないとヤスナは言う。
「大丈夫だよ、形は変わっても餓鬼の頃から歩いてる森だからな」
「…でも」
「ヤスナ、いま俺を心配出来る体調じゃねぇだろ」
頑張って立ってんのが痛いくらいによく判る。
俺はヤスナを家の中に入れて座らせた。
ヤスナは机をちら、と見る。
「…確かに、机がこの状態で往診に行くわけないな」
「だろ。あんまり不自然だから、少し不安になったんだよ」
なるほど、とヤスナが笑う。
笑った顔を見るといくらか安心できた。
でもやっぱり、
ヤスナは少しずつ、弱ってきている気がする…。
「じゃあ俺、また行ってくるから。大したもんは採れないかもだから、あんまり期待しないでくれよ」
「わかった。無理しないならそれでいい」
それは俺もだよ、と笑って、俺は再び家を出た。
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