真白【キリト】

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「ヤスナ先生は町のお医者になろうと思わなかったの?」 「町のお医者とは?」 「こんなちっちゃい村のお医者より、町のお医者の方が色々すごいんでしょ」 「町には父上が頻繁に行ってたから、一応医術は遅れてないぞ」 「だけどヤスナ先生もったいないよ。頭の良い、凄い先生なのにさ…」 町には私より凄い医者など何人もいるだろう、と言いながらヤスナ先生は薬草を潰す。 そういえばヤスナ先生の父様は町によく呼ばれてたけど、ヤスナ先生は呼ばれないのかな。 「…そういう文はたまに来るが、いつも丁重に断っている」 「えっ、なんで」 「センリはともかく、町につく前に、その途中の山で私は力尽きるだろうから」 「あぁ…」 ヤスナ先生だもんな。 嵐で寝込む先生だもんな。 いつも患者に心配されてる先生だもんな… 確かに山3つも越えてたら途中で死んじゃうかも… 「それに、私がもし町に行ったらこの村の医者はどうなる」 あっそっか。 地形のせいか怪我人が多いこの村で、ヤスナ先生は唯一のお医者だった。 センリ先生もお医者だけど、ヤスナ先生が町に行くんだったらセンリ先生も必須だしな… だったらこの村にいてくれなきゃ。
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