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「先生っ…俺どうしたらいい?水持ってくる?」
一瞬で背中に嫌な汗が出た。
ヤスナ先生が体が弱いのはよく判ってる。
でもいつもはセンリ先生が側にいるから…
……そうだ。
「センリ先生さっき出て行ったばっかりだよな、呼んでくるよ」
「…駄目だっ」
ヤスナ先生は着物を握りしめていた白い指で、俺の袖を掴んで言った。
「はぁっ……ゲホ…昨日の嵐で…只でさえも危ない森が荒れてるんだ…」
「でも」
「キリト…センリがさっきどうして戻ってきたのか……っ…ゴホッケホ……話しただろ」
「じゃあ…じゃあ…欲しいもの言ってくれよ…俺何でも持ってくるから」
袖を掴んでいる細い指を、両手で包むように持って聞く。
ヤスナ先生は苦しそうな息を整えて、俺の方を見て声を絞った。
『…森には行かないと約束してくれ』
そのとき俺は焦っていたから、その言葉も大して考えないで、素直に頷いて終わってしまった。
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