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今日のヤスナ先生の着物は、真っ白な麻だった。
それが…
それが真っ赤になってて。
口を抑えてる右の手のひらから、先生が咳をすると、
…赤い雫がたくさん落ちて着物が赤くなるんだ。
…嫌だ。信じたくない。
あれは…
あれは…
…違う違う違う…嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「……せんせ」
「ゲホッ!!……ケホ…ゴホッゴホ」
ボタボタボタ……
人間は血を吐いたらもうすぐに死ぬんだと、
俺は今までそう思ってた。
だから目の前の事を信じたくなくて、でもよく解らないから、思わず先生に聞いた。
「…先生…死ぬの」
「ゲッホ………だからお前は……勝手に…殺すな……」
俺から水を自分で取って飲んだヤスナ先生は、白い着物の袖で口を拭って息をついた。
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