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泣き止まないキリトをなだめて帰らせる。
そんな顔して帰ったら…と思ったが、キリトはその辺に寄り道しながら帰ると言った。
…真っ赤な目を戻すための時間稼ぎだ。
「だったらそれまで…ここにいたら良いだろう」
「ヤスナ先生の顔見ると、いま涙止まんないんだもん」
「…じゃあ…あまり変なとこ行かないで帰れよ。あちこち嵐で危なくなってるから…」
「大丈夫」
そしてキリトは帰った。
誰もいなくなると音も消えて、外の天気の良さがよく解る。
何もなかったみたいだ。
今までキリトがいたことさえ、信じられないくらいに…
静かで、
暖かで、
…まるで…天にしらを切られているようで…。
今あったことをそんな風に無視したいのはこっちだ。
不気味な天気だな…
血で派手に汚れた着物を着替える。
…あ…白いのって…これだけだったか…
普段は割と暗い色を着ているから…あー…失敗したな
…まあいいや。
洗っても落ちないだろうから焼却炉に放り込んで燃やす。
それから湯飲みを戻して、本当に何もなかったように片付けた。
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