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「センリ…打ったの腕だけじゃないんじゃないか」
「へっ?」
「また気付いてないだけで…本当は頭も強打したんじゃ…」
「えっ嘘!?頭……そうなのかな……いやでも頭は打ってないと思……あ…額は朝強打したけど……」
真剣に考え始めたセンリを見て笑いそうになりながら、
「私は朝からこれ着てたぞ」
と素っ気なく言って、包帯の端を止めた。
あーあ。
最初からそのつもりだったけど、ついにセンリに嘘ついた。
もう引き返せない。
後悔と一緒に覚悟した。
もう何がなんでも限界が来るまでセンリには、
自分が今の医療では治せない病気であると言わないと。
二十数年生きてきてお前に初めてついた嘘がこんなのだなんて、
隣の爺さんに「何でも分かり合える双子」と言われたその双子が聞いて呆れる。
腑に落ちない顔をしているセンリを前にして私は内心苛々しながら言う。
「とにかくこっちの腕に力かけないようにね。今度こそ折れるかもしれないから」
「わかったー」
平静を装っていたけど、センリの軽い口調の返事を聞いて、そこでやっと安心した。
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