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その言葉を聞いた瞬間、背中を強く突かれたような衝撃が走った。
どくん・という異様な音が体の内側から聞こえて、思わず目を見開く。
「………っ………」
咳き込みそうになる口元を片手で塞ぐ。
俯いているセンリの肩に置いていた左手が強張った。
良かった、
いま俯いてなかったら、センリは私の手の平に滲んだ血を見ることになった。
着物が黒いのを良いことに、すぐに袖でそれを拭う。
「センリも村の人も、心配しすぎだ…」
「心配するだろ…ヤスナみたいな人を心配しないで、一体誰を心配するんだよ」
「いま病床に着いてるわけでも無いのに」
「今すぐ着きそうだろ、いつでも」
大真面目にセンリが言う。
せめて冗談ぽく言ってほしいものだ。
私は力無く顔を上げたセンリの目を見て、
「大丈夫」
と一言だけ言って笑った。
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