44人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
「最近キリト見ねぇな」
ある朝、質素を極めた朝食を食べながらふと呟いた。
食べ物が酷いのは村中どこの家もそうだ。
今年は秋になってから作物の出来が悪い。
これまで稀だった嵐や大風が頻繁に来る。
キリトの家はいつも様々な野菜を豊作にするが、今年のこの異常な気候にはかなわなかったらしい。
だからなのかな、とも少し思った。
「センリは一日中森に行ってるからだけど、昼には来るよ」
「あ、そうなんだ」
「来るたんびに『センリ先生はぁ~?俺センリ先生にも会いたい~』だ」
「はははは」
キリトが医者になりたがってるのは前に聞いた。
だが森には絶対来てはいけないと言い聞かせてある。
だから連れて歩くわけにもいかないしな…
「じゃあたまには少し早めに帰ろうかな」
「そしたら喜ぶよ」
「……キリトって家に来て何してんの?」
「何してるって………」
ヤスナは箸を置いて、考えるような顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!