転落【センリ】

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緑色の硝子玉。 割れないで入ってたんだ。 キリトはこれをお守りだって言って俺にくれた。 ただの硝子玉なのは判ってるけど… この際何のお守りでも良いからすがりたい気分…。 硝子玉を握りしめて這いずるように前に進むが、すぐに力尽きて止まる。 すると血で汚れていた手から硝子玉が滑り落ちて、少し先まで行って止まった。 俺は地面に伏せたまま黙って硝子玉を見つめる。 力を振り絞ってそこまで行くと、触れた硝子玉はまた滑って先へ転がり、止まった。 必死で拾いに行く。 硝子玉は転がって止まる。 やっと追いつく。 また転がって止まる。 この繰り返しが何度続いたのか、どれだけこの体を引きずって森の中を歩いたのか判らないが… やっと空の見える場所に出た時、空は気味悪い程真っ赤で、全てのものが赤く見えた。 そしてその時ようやく、先へ先へと逃げ続けた硝子玉を手の中に収めることが出来た。 俺がその時覚えてるのはその2つだけ。 遠くで誰かが大声を上げているのを聞いて、後は長い間ずっと暗闇だった。
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