- 散るは桜 薫るは梅 -

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   万(ヨロズ)の花を携(タズサ)えて  万の道を迷い歩み  万の月を見上げ  ただ深く眠ろう  千万(チヨロズ)の行末(イクスエ)  儚く思い患い病むように  店先で咲き誇る花  誰の目に留(トド)まり  選ばれただけの  美しき花の群れは  新世代の君らと同じ  誰の目にも留まらず  軒下で秘かに咲く  名も無い花  道の脇にも  生い茂る草むらにも  小さくても生きている  逞(タクマ)しき花は  旧世代の ぼくらを  見ているかのよに  花か雑草の違いは  判断の違いにすぎぬと  昔(イニシエ)の誰かが  誰かに説(ト)いていた  選ばれた花も  捨てられるだけの草も  行く末を知る  千の花を携えて  千の道を迷い歩み  千の月を見上げ  ただ深く眠ろう  幾千の行末  儚く思い患い病むように  店先に並び買われてく  花と同じように  ぼくも君も誰かの目に  留まるんだろう いつか  選ばれた者しか  与えんものは  のどから手が出る程  欲しいと思うものなのか  手元にあるもので  補えるのなら  手に入れても  仕方ないんだろう  ぼくらは流行りものに  弱くて どうしても  欲しくなる  オリジナルより  同じものでないと  さびしすぎて  誰かが そばにいてくれても  さびしいものは  さびしすぎるから  百の花を携えて  百の道を迷い歩み  百の月を見上げ  ただ深く眠ろう  幾百の行末  微かに思い患い病むように  
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