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タンッ
矢が的に当たる音が聞こえてきた。
誰かいるのかな?
私がそっと道場を覗くと、一人弓を引こうとしていた。
あの人二年の先輩で、確か…当麻(トウマ)先輩?
!!
当麻先輩が弓を引いた瞬間、私は目を奪われた。
綺麗な射型…。
タンッ
矢は的に真っ直ぐ当たった。
「誰かいる?」
当麻先輩の言葉に私はビクッとした。
「あ、あのっ!すいません、覗いてて!私も朝練しようと思って…」
私は慌てて道場に入った。
「君は一年生の…確か鈴宮さんだっけ?」
「はっ、はい!」
当麻先輩はニコッと笑った。その笑顔に胸が締め付けられたのがわかった。
「謝らなくてもいいよ。鈴宮さんは経験者だったよね?入部が決まった日、皆の前で引いたよね?その時の射型、凄く綺麗だったよ」
「ありがとう…ございます」
胸の鼓動がどんどん早くなっていくのがわかる。射型を誉められただけなのに。
「今日は俺一人みたいだし、一緒にやってくれると寂しくないんだけどな」
「はっ、はい!」
私は顔を真っ赤にして、急いで準備を始めた。
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