あふれる思い

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バケツに水が入っている。 なみなみで、 あと一滴でも入ると、溢れるんじゃないだろうか? バケツの中の水は、静かに、静かに波紋を作っている。 誰も揺らしてはいないはずなんだけれど。 ミシミシと、苦しそうにきしみながら。 水の波紋が、 音となって、 外に漏れていく。 「悲しい」 でも、 その音はとてもとても 小さいから。 耳に届く前に消えてしまう。 もし、今このバケツを 誰かがけってしまったら。 水はどうなるんだろう? 大きな音を立てて水がこぼれ、 周りをびしょびしょにぬらし、 蹴り飛ばしてしまった人も、 濡れてしまった人も、 皆唖然とするだろう。 そして、そこには。 空っぽになったバケツが、 疲れ果てたようにただ 転がっているだけなんだろう。
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