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完全に吹っ切る為に友理奈を探していた。さっきの話からすると陽平のいる屋上にいるはず。ゆっくりと屋上への道のりである階段を昇っていたら丁度陽平が出てきた。
「あ、友理奈、中にいるか?」
「ああ。」
「サンキュー」
俺は陽平とすれ違って屋上に入る。陽平が辛そうな表情をしていたのを気付かないふりをして…
「友理奈ー」
俯いている友理奈の顔を覗き込めば頬には涙が伝っていた。
「何、泣いてんの?」
「…私、陽平とやって行ける自信ない。」
「どうしたんだよ。」
「陽平、私じゃない他に好きな人がいるの。」
「…マジで?」
「……梓ちゃん、だって。」
「……」
「私、根拠はないけど、陽平を振り向かせる自信あったの。だけど元カノには敵わないみたい。」
「元カノ?」
「知らないの?陽平、梓ちゃんと付き合ってたんだよ?」
そんな話は初耳で、二人からは全く聞いたことがなかった。思えば二人のこと何にも知らない。
「二人共、本当に愛し合ってたんだって。だけど陽平と私が二人で歩いてる所、梓ちゃんが見ちゃって喧嘩別れしちゃったらしいんだ…すぐに仲直りはしたよ。けど、梓ちゃんには風馬くんがいたから、元の関係には戻れなかった。」
「何で風馬が関係してくんだよ。」
「じゃあ光輝はあの二人の絆の中に入って行けるの?」
「いや、無理だな。」
梓と風馬の親が元から親友だったから、二人は生まれた頃からの幼馴染みだった。生まれた日も1日しか変わらないなんて奇跡だとか言われてる。そんな二人の中に入って行ける訳がない。今はまだお互いに恋愛感情は抱いてなさそうだけどな。
「つい最近に初めて会ったけど、ずっと前から知ってた。陽平と梓ちゃんの関係。風馬くんの存在。陽平の本当の想い。ずーっと前から知ってたの。きっと全てを知ってるのは私だけだと思う。」
「いや、知らないことだってあるよ。」
「え?」
「俺、ずっと前から友理奈のこと好きだった。だから陽平と婚約するって聞いてスッゲーショックだった。だけど現実は受け止めなきゃなんねぇし、友理奈には幸せになってほしいし、素直に諦めようって思った。…だけどさ、そんな顔されてると諦めようも諦めらんねぇんだよ!」
「光輝…」
「陽平の気持ち、ちゃんと留めとけよ。」
「ごめん、ごめんね、光輝。」
俺は友理奈の背中に手を回して抱き締めた。
「今は誰も見てねぇから、思いっきり泣いとけ。」
「…うん。」
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