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「待ってろよ……ネネ」
ベンチは痛む足を引きずりながら、ゴミ捨て場まで歩いて行く。そしてようやくたどり着くと、しっかりタイをくわえ、商店街をゆっくりと歩いて行った。
ようやく商店街を抜けたベンチ。ひしひしと痛む足を引きずりながら、さらに住宅街を歩いていく。
「あ!! あれこの前の猫じゃね?」
「本当だ!!」
ベンチの正面には、以前ネネをいじめていた三人の少年が、傘をさしランドセルを背負い三人ならんでこちらを指さしているのが見えた。中央の少年は赤いキャップをかぶっている。最悪だ。
逃げ出そうにも、体中は痛み、いつものサンマより重い、タイをくわえている。どうあがいても逃げ切れない。
すると向って左側にいた少年が一直線にベンチに向って走ってきた。少年はそのままベンチを蹴り飛ばす。
「この前の仕返しだ!」
鈍い音と共にベンチは宙を舞い、ドサとコンクリートに叩きつけられる。それを見た他の少年たちも加わり、木の棒でたたき、小石をぶつけ、蹴りを入れる。
「なんだこの魚。きったねぇー」
赤キャップの少年はそう言うと、思いっきりタイを踏みつけた。
「あぁー楽しかった。もう帰ろうぜ!」
数回タイを踏みつけると、赤キャップの少年は他の二人に声をかける。そして、三人の少年は軽い足取りでその場から去って行った。
「ちく……しょう」
もうダメだ。これ以上は体が動かない。もう痛さを感じないほどまでになってきている。
激しい雨がベンチの体に突き刺さる。
「まってろよ。今……いくからな」
しかしベンチはあきらめない。もう極限状態の体に鞭を打ち、泥だらけのタイを必死でひきずり、ネネの待っている公園へと歩いて行く。
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