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「アイツのせいで飯がなくなっちまった」
公園を去り、住宅街を歩くベンチ。これからどうしたものか。もう一度商店街で食事を奪う? いや、公園での出来事で精神的に疲れていたベンチにはその選択肢はないようだ。
「しゃぁない。ゴミでもあさるか」
なぜかもやもやとした気持ちのまま、行き着けのゴミ置き場へと足を運ぶ。
しばらく歩くと、目の前に黒や白、透明のビニール袋の山が視界に入ってきた。ベンチからしてみれば宝の山である。ベンチは迷うことなく、自慢の爪でビニール袋を引き裂き、何か食べられそうなものはないかと探しだす。
「お! ラッキー」
なんといきなり大当たり。最初に引き裂いたビニール袋からは、大量の生肉が出てきた。すぐさまかぶりつくベンチ。数分後には全ての生肉がベンチの胃袋の中へと姿を消してしまった。
お腹が満たされたベンチはひとまずその場で休憩を取ることにした。四本の足を曲げ、冷たいコンクリートに寝転がる。空はもう太陽が沈みかかり、天をオレンジ色に染めていた。
そしてベンチは今日あったことを思い出す。さっきからずっと感じている、このもやもやとした気持ち。喉に小骨が刺さったような不愉快な感じ。その原因をさぐるためだ。
「ネネ」
ふと頭に浮かんだその単語を、何気なく声に出してしまう。そうか、アイツがいけないんだ。人間に捨てられたくせに、今だに誰かに助けてもらおうなどという甘ったれた考え方。それに俺はイライラしていたんだ。そうだ、そうに違いない。
でもなぜだ。自分で出した答えなのに、自分で納得がいっていない。なかなか答えが出ないことに、イライラは募るばかりのようだ。
「あぁーもうなんなんだよ!」
ベンチは前足で頭をかきむしった。
「確かめるか」
そういうとベンチは、ネネと出会ったあの公園に向って走って行った。
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