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数十分後、小さな公園に着いたベンチの眼に、三人の小学生ぐらいの子供が見えた。
薄汚れた小さいダンボールを取り囲み、何かを棒で突っついたりして遊んでいるらしい。
ベンチは走った。直感的にだが感じた。ネネが危ない。
でもなぜ? なぜあんなやつなんかのために俺は走ってる? ほっとけよ。他人じゃねぇか。関係無い。
様々な考えが頭の中を駆け巡る。そんな思考を押しのけ、ネネの声が頭に響く。
『ありがとう!!』
『ベンチって優しいんだね!』
「ちくしょう」
ベンチはさらにスピードを上げ、一人の少年に飛びかかった。
「うわ!!」
それと同時に、力の限り噛みつく。少年はがむしゃらに暴れ、ベンチを振り落とした。ベンチは空中で一回転すると、綺麗に着地し、ボロボロで泣いているネネを守るように、少年たちと対峙する。
「なんなんだお前!」
「あっち行けよ!」
泣きわめく一人の少年をしり目に、残りの二人が声を荒げる。ベンチはそれを意に返すことなく、鋭い眼光を飛ばす。
「くっ、もういいよ! いこうぜ!」
赤いキャップをかぶった少年はそう言うと、乱暴にその場を後にした。もう一人の少年は泣き叫ぶ仲間をあやしながら、赤キャップの少年の後を追う。
少年たちの姿が完全に見えなくなるのを見守ると、ベンチはクルっとネネの方を向き声を荒げる。
「なにやってんだてめぇ!! 人間が来たら逃げろよ馬鹿野郎!!」
「だって……トモ君は僕をいじめたりしなかったもん」
涙ながらに必死に訴えるネネ。トモ君とはおそらくネネの飼い主だった人だろう。
「アホかてめぇは! 皆が皆良い人間なわけねぇだろ!!」
さらに続けてベンチは言った。
「いいか! もう飼われてた時とは違うんだよ! 腹が減ったらてめぇで奪って、自分の命は自分で守っていかなきゃいけねぇんだ! ここはもうそういう世界なんだよ!」
そこでネネが大声で泣き出してしまった。
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