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ヤバい。言い過ぎたか? そんな考えが一瞬ベンチの頭をよぎったが、これはしかたのないことだ。あの甘ったれた根性はこうでも言わないと治らない。そしてベンチは意を決したように、ネネに言った。
「これから俺がお前に、この世界で生きてくためのコツを教えてやる」
それを聞いたネネは、かすれた声で問いかける。
「じゃあ……ずっと一緒にいてくれるの?」
「ずっとじゃねぇ。お前が一人で生きていけるまでだ」
「でも……一緒にいてくれるんだよね?」
その問に困ったような顔をしながらベンチは言う。
「まぁそうなるな」
先ほどまでの泣き顔とは一変、ネネは満面の笑みでベンチに抱きつきながら言った。
「ありがとう!! ベンチって優しいんだね!」
ベンチは思った。なんだろう。この感覚。さっきまでのもやもやが綺麗サッパリ無くなった。なぜそんなにもやもやしていたのか、確かめることはできなかった。
だけど……なんだか温かい。今まで味わったことのない感覚に困惑するベンチだが、これはこれで悪くないと思い、しばしその感覚に浸ることにした。
太陽はその日の仕事を終え、完全に姿を隠し、代わりにお月さまが温かい光を放っていた。雲ひとつない綺麗な夜空だった。
そして、その日を境に、ベンチとネネはいつも行動を共にした。
「いいかネネ。よく見とけよ!」
「うん!」
ベンチはネネにそう言い残すと、忍び足で商店街の魚屋に近づいていく。そして、お目当てのサンマの近くまで来ると、ジャンプしてサンマの尻尾に噛みついた。そのままサンマを口にくわえ、いちもくさんに魚屋を後にする。
「サンマが食いたいときはこうやって奪うんだ」
「すごいね! でも、後のおじさん誰?」
ネネは首をかしげながら笑顔で言った。
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