『吟遊詩人(ミンストレル)Ⅱ』

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慈悲(ピエタ) 真っ白な心満たしていく 慈悲 この身を包み撫でる 風の様に 慈悲 涙を流す事さえ知らず 慈悲 青いばかりの空を眺めていた 「ようこそ、皆様  今宵も開幕  我ら『青き風の奇術団』  喪失は白く、憎しみは黒く  怒りの朱色と  悲しみの縹(ハナダ)  鮮やかな狂気は黄色に託し  迷い惑うのは  万緑の叢中(ソウチュウ)  濡れ潤む血の紅は  褪せる事無く  尽きぬ嘆きは藍の深さ  身に染む腐臭は紫暗に移ろう  取り取り、様々の色を纏いて  青き風の導くままに  我ら『青き風の奇術団』  喪失の叙事詩にお耳を拝借」 人は生まれ 生を紡いで 己を作る 喜びも怒りも 悲しみも楽しみも 全てが心のまま あなたの戯曲(ドラマ) されど 青きリュートを爪弾く少年に 己は無く 白く白く 忘却の果てに喪失を知る
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