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『お父さんは何の仕事なの?』
幼い頃、遙がそう母に尋ねた事があった。すると母は少し考えてから、遙に目を合わせて答えた。
『正義の味方……みたいな事よ』
正義の味方――。
みたい、と付け足されても幼い遙には、それが憧れの対象となった。
『じゃあ、大きくなったら俺もやる!』
しかし、その答えに母はとても不安げな顔をしながら首を左右に振るのだった。
『遙、それはいけないの。お父さんも、それだけはしてほしくないはずだから』
言われた意味が分からなかったが、遙はそれが母を悲しませる事なんだと悟った。
『――ねぇ、お父さんは……本当は何をしてるの?』
数年後に遙が直接、父に問うた。すると、父は不思議な事に笑みをこぼしながら答えた。
『悪い奴らにお仕置きする仕事だよ――』
楽しげに見えた父の表情。その裏に隠された本心を、遙は感じ取りはしたが知り得なかった――。
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