#2

5/9
前へ
/30ページ
次へ
仕方なかった。 俺が、不甲斐ない人間だと言う事実のみだ。 別れるとき、彼女は泣かなかった。 俺の前では。 『いいの』 とだけ言い、煙草を吸った。 それでも、会社で会ってしまうのは、想像以上の辛さだった。 今では、ただ後悔している。 もっと早く気付くべきだったと。 貴重な、彼女の時間を、無駄にさせてしまった。 俺がそう言うと、彼女は首を振り、「別に、」と言った。 出来れば、もっと罵声を浴びせてくれたらな、と都合のいい事を思ったりもした。 弁当を食べ終え、窓を開けた。 煙草の変わりに外の空気を吸う。 窓から外を見下ろすと、彼女の姿が小さく見えた。 会社から一番近いファミレスに、週に2~3回は仲の良い女性社員と行っていた。 痩せたな、と思う。 自惚れるわけじゃない。 でも、痛々しいと感じた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加