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仕方なかった。
俺が、不甲斐ない人間だと言う事実のみだ。
別れるとき、彼女は泣かなかった。
俺の前では。
『いいの』
とだけ言い、煙草を吸った。
それでも、会社で会ってしまうのは、想像以上の辛さだった。
今では、ただ後悔している。
もっと早く気付くべきだったと。
貴重な、彼女の時間を、無駄にさせてしまった。
俺がそう言うと、彼女は首を振り、「別に、」と言った。
出来れば、もっと罵声を浴びせてくれたらな、と都合のいい事を思ったりもした。
弁当を食べ終え、窓を開けた。
煙草の変わりに外の空気を吸う。
窓から外を見下ろすと、彼女の姿が小さく見えた。
会社から一番近いファミレスに、週に2~3回は仲の良い女性社員と行っていた。
痩せたな、と思う。
自惚れるわけじゃない。
でも、痛々しいと感じた。
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