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「いたのかよ…」
浦正がキッとつり上がった目で俺たちを一睨みした。
ヤバいと思ったが、浦正は何も言わずにくるりと背を向けて2、3歩進んで足を止めた。
「中に狂平がいる。かなりきつく言っちまったから愚痴でも聞いてやってくれ」
一言だけ残し今度は本当にどこかに行ってしまった。
浦正がどういう気持ちでいたのかは顔すら見てないから分からないが、その一言が妙に俺の耳から離れなかった。
「と、兎に角今日は部活は中止だ。桃とコジに言ってくる」
「OK」
「ザンは浦正を追ってくれるか?」
「でも狂平は…」
チラリと開いたままのドアに目を向けると、下を向いて立ち尽くしている狂平が見えた。
「俺の勘だけど今は1人にして置いた方がいいと思う」
俺より長く狂平と一緒にいる部長が言うのであればそれは聞くしかない。
首を縦に振って了解した。
「じゃあ俺は桃たちのクラスに行ってくる」
頼んだぞ、と俺の肩を叩き、部長は駆け出した。
俺はもう一度ドアの向こうの狂平を見た。
だが、すぐに浦正を追いかけに走りだした。
否、走らざるにはいられなかった。
浦正に対する激しい怒りがこみ上げてきた。
部屋にいた狂平は両手で顔を覆い、肩を小刻みに動かしていたから。
一瞬見ただけでも十分に分かった。
狂平は
泣いていた。
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