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教室、体育館、グラウンド、売店。
色んな所を探し回ったが浦正は見つからない。
放課後なだけに生徒が少なく、目撃情報もいまいち集まらない。
結局見つけられないまま、また部室の前に戻ってきてしまった。
「あっ…」
開けっ放しのドアの向こうにはもう狂平の姿はなかった。
だが、代わりに狂平が立っていた所に探していた浦正がいた。
「何やってんだよこんな所で…」
「ザンっ!」
浦正は勢いよく顔を上げた。
さっきのあの鋭い目つきをしていたのと同一人物とは思えない、覇気のない目が俺を見る。
「狂平は…?」
「知らない。部長にお前を追うように言われたから」
浦正はそっか、っと独り言のように呟き、また下を向いてしまった。
浦正に会ったら狂平を泣かせた罰で一発殴ってやろうと思っていたが、さすがにここまで落ち込んでいるやつに手は挙げられなかった。
すると浦正はおもむろに自分のポケットをあさりだした。
そしてそのポケットから出した物を俺の右手に握りこまさせた。
「何?この500円玉」
「ジュース代。それでなんか飲み物買って狂平の所に行って話を聞いてやってくれ。つりは初めて喋った時に約束したジュース代」
何を言い出すんだこいつは。
狂平を泣かせたのは一体誰だ。
あんなに落ち込ませたのはどこのどいつだ。
なのになにが愚痴を聞いてやってくれだ。
収まりかけた怒りがまたふつふつとこみ上げてきた。
「……んなよ」
「ザン?」
「ふざけんなよ、お前!」
勢いのまま浦正の胸ぐらを掴み、右手は500円玉をを握った振り上げた。
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