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いくら胸ぐらを掴んで相手を固定した所で、相手は浦正だ。
素早い反射神経で俺のパンチを受け止めた。
「何すんだよザン!」
「何だじゃねえよ!意味の分かんねえことばっか言いやがって!」
「何が分かんねえんだよ!狂平の話を聞いてやってくれって言ってるだけじゃねぇか!」
ブンっと勢いよく浦正が俺の両腕を払い出す。
目はあの俺と部長を睨み付けた目に戻っていた。
「それが意味分かんねえんだよ!お前知ってんのか?狂平泣いてたんだぞ!落ち込ませて、泣かせて、ひでぇ事しておきながら心配する素振りってお前は何考えてんだよ!」
分かっている。
浦正が本当に心の優しい奴だって事。
何があってもどんな時でも友達の事を気にかけてあげられる奴だって事。
分かってるんだ。
でも、まだそれとは違う何かがあるような気がして仕方なかった。
「何でかって…そんなの簡単な理由に決まってるじゃねぇか…」
浦正の目は何か遠くの何かを見つめていた。
穏やかで優しい目だった。
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