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…やっぱりそうだったか
前々からたまに自分と同じ匂いを感じる事があった。
だから所詮疑惑が確信になっただけだったため、頭の中は案外冷静だった。
カラン
そう頭はいたって冷静。
でもやはり体は正直だった。
浦正の告白を聞いた後体の力が抜け、ぎゅっと握っていた右手から500円玉が滑り落ちた。
落ちた音がやけに大きく聞こえたのは、きっとこの沈黙のせいだろう。
俺は何も言わずにその500円玉を拾い、浦正と顔会わさず開いたままのドアから教室を出ようとした。
「ザン!多分…いや、絶対狂平は屋上にいるから!」
後ろで浦正が叫んだ。
「そんなの俺でも分かるよ」
俺は浦正に振り返らず足も止めずに答えた。
「ならもう1つ!飲み物はシナモンの入ったやつ買ってやってくれ!あいつシナモン好きなんだ!」
何も答えない代わりに右手を上げた。
そのまま自動販売機で飲み物を買って、屋上を目指した。
ガチャっと屋上の扉を開けると、柵に肘を置き、緑色のネクタイをなびかせながら空を眺める、狂平がいた。
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