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「……あの森……、『死の森』は、行ったら二度と帰って来れなくなっちまうんだ」
「死の森……?そう言う名前なのか!?」
「二度と帰って来れないって、どういう事ですか!?」
店主の口から出てきた意外な言葉に、エドワードとアルフォンスの二人は少し混乱する。
すると、店主は更に重々しそうに語り出した。
「昔な……、ある一人の男がこの村に来て、死の森に入って行ったんだ……。だが、その男が森から帰って来る事は無かった。
そしてそれからと言うものの、相次いで死の森に訪れた者は、姿を消していった……。あの森に行くと、もう二度と帰って来れなくなるんだ!
ずっと普通で何ともなかったこの村の森で、ある一人の男が消えてからその森は『死の森』と呼ばれるようになり、この村の住民は恐れを感じたのか、次々にユリウス村から出て行った……」
「……そ、そんな事があったなんて………。ねぇ兄さん!やっぱり森に行くの、やめようよ!」
森の秘密を知った今、アルフォンスの胸には恐怖という二文字が浮かび上がっていた。
「………アル、この三年間、オレらは何のために旅をして来たんだ?」
「……そ、それは………」
しかしエドワードには、そんな森の秘密など、どうでもいいのだろう。
自分達の探し求めていた物が見つかるかもしれない。そんなチャンスを逃していいわけがない。
エドワードは、その事をアルフォンスに分かって欲しかった。
アルフォンスにも、そんな兄の思いが痛いほどに伝わってきた。
「今まで、オレ達二人はただひたすらに目標に向かって走って来た。でもな、今ここで挫折してどうするんだ!?
オレ達の、”元の身体に戻る”って想いは、そんな目に見えない恐怖で諦めちまうほど薄っぺらいモノだったのか!?」
「そんな事ない!……ボクらはあの時誓ったんだ!……必ず………、必ず元の身体に戻るって………!」
「だったら!!何で森に行く事をやめようとするんだ!?『死の森』だか何だか知らねぇが、
そんなのが恐くて、これから先起こる出来事と向き合ってられるかよ!?」
「………」
エドワードの必死な顔を見たアルフォンスは、どうしても言い返す事が出来ず、黙りこくってしまう。
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