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『ギャア……!バササ…………!!』
「きゃあっ!!!」
エドワードと同じく、カラスの鳴き声や羽ばたきで驚く者がここにもう一人…………。
「な……、なんだぁ~!カラスの鳴き声かぁ~!ビックリしたぁ~!……や、やぁね!こ……、怖くなんかないわよ!!あ……、あははははは………」
自分への勇気付けの独り言も虚しく、その独り言は森へとこだまし、消えてゆく………。
「そ、そうよ!私にはコレがあるわ!!」
ウィンリィは自分の肩から下げているカバンの中から特大スパナを取り出し、それをスチャッと持って構えながら森の中を再び歩き出した。
今のウィンリィの格好は、半袖Tシャツの上に長袖の上着を羽織り、半ズボンを履き、肩からカバンを下げ、そのカバンのチャックの部分から半分外に突き出している森の地図、頭に発掘作業用のライト、といった、まるで探検家のような、且つ、アウトドア向きの格好である。
それプラス、ウィンリィお約束の特大スパナ。
これはしっかりと両手で握りしめている。
そして、震えているウィンリィのその全身は、夜の森の中の孤独感と恐怖感を充分に物語っている。
「うぅ……、やっぱり、こんなとこ一人で来なけりゃ良かった………」
しょんぼりするウィンリィ。しかしここで突然、気を紛らわすかのように明るくなり出した。
「そうだ!歌えば怖さなんか吹き飛ぶわ!……ルンルンランランルンルンルゥ~~♪」
ウィンリィは恐怖のあまり歌い出したが、やはり怖いのには変わりがないらしい。
ウィンリィのその歌声は、震えていた。
「……なんか、返って怖くなってきたかも……」
ウィンリィの歌ったその震えた歌声は森に響いてこだまし、返って何か別の生き物のような呻き声へと変化していたのである。
物静かなこの森の中で、ウィンリィの声は森中へと響き渡っていた。
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