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雨の中で立ちすくんでいる子供がいる。
空を見上げて、瞳を閉じて。
雨は、子供を容赦なく叩き付ける。
その時、瞳からぽとり、ぽとりとしょっぱい水が流れていっているのに私は気付いた。
《…涙…?》
子供がその声に反応して、尋ねる。
<なんでここにいるの?だめだよ、ここにいちゃ。>
《え?》
<もどらなきゃ、だめだよ。かぜひいちゃうよ。>
《…君は、誰…?》
<おもいださないで。ここにいちゃだめ。>
《…君は…》
<だめ!!!!!>
大波が来る。飲み込まれる。子供の姿も見えなくなっていく…。
~§~§~§~§~§~
「…ん…?」
チュンチュン、チュン。
鳥が朝を告げる。
「朝…。」
ぼーっとしながら私―千春はため息をついた。
(ハッピーエンドで終わる恋愛なんてない…。)
わかってしまったから、苦しい。
それでも愛されたいと思う自分が哀しい。
愛したいと思う自分が哀しい。
(永遠に続くものなんて、ない。)
心だけ繋がっていたいなんて綺麗事だから、人は肉体の繋がりも求める。
貪欲に。
(それじゃ駄目だ。)
今の千春には無理な状況。人を好きになりたくても、好きになっても、結ばれることは、ない。
わかっていても、求めてしまう。あたたかい腕を。優しい時間を。
(まだ、遠いのに。)
知っていた。
夢で泣いていたのは、間違いなく自分。
「…っ!」
むせび泣く。その時を忘れたいと強く願いながら。
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