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確かにあの日、僕は自由という光を手に入れた。
―10年前―
雨が、降らない日々が続いた。渇き切った僕に、君は水と安定感を与えた。
でも、君の姿は夢見た蜃気楼。僕には違和感が生まれた。
そして、この日が来た。君は僕が生み出した涙の雨の下で笑っていた。
「君に出会えて僕は、僕が本当に望んでいることを知ったんだ。」
見上げた空は、暗く燃えていた。
「…ここから僕は出る。」
【…僕ヲ置イテ?】
淡々とした、機械的な声。
「いや、違うね。」
苦笑して見つめた君の瞳に眼球はない。空洞だった。
「君は、気付いていたんだろ?…『君』は、『僕』だった、ことを。」
【…】
君は俯いて、一言も発さない。僕の心は、どこまでも冷淡だったかもしれない。
「…今まで、ありがとう。」
【…ソレダケ?】
「ああ。」
二人の僕は、一人の僕になる。二つの道は消えて、一つになっていく。
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