序章

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見上げるといつも青だった 眩しいくらいに真っ青で恐怖すら覚えた 屋上 横たわる脇には風になびくノートと黒くなった五線譜 7月の風に身を任せたまま 目を閉じ、仰向けになり五線譜の海に横たわる 視界には空しかない 静かな一人だけの世界 「葵」 風だけの静寂の世界を破ったのは 入り口のドアから半分顔を覗かせた女の子 「楽譜飛んでるよ。葵?」 「…ありがとう」 はい、と横たわったままの葵の目の前に楽譜を差し出す 「いい天気だねぇ~」 にっこり笑う詩織にうっすら目を開け、太陽の眩しさに目をそらす 楽譜を受け取ると立ち上がる 「葵?」 「呼んでるよ」 「詩織、葵」 葵の声に続き、再び屋上のドアから人影 「幸斗」 詩織にそう呼ばれる男の子 矢野幸斗 詩織の双子の弟 詩織と同じサラサラの髪に大きな目 長い睫 目を引く二人は美男美女の双子と昔から有名 「ほら行くよ」 「あっそうだった!ごめん、葵」 幸斗の言葉に詩織が慌てる 「何?」 「今日葵もうち来るでしょ?美優の退院祝い」 「行く」 「やった」 葵の一言にパァッと笑顔が広がる そんな詩織に笑みを向け,荷物をまとめ、制服をはたくと屋上をあとにする いつもの日常 葵 詩織 美優 幸斗 一緒にいるのが当たり前になって人知れず学校では有名だった “何でも出来る完璧な女” “美男美女の双子” “病弱な美女” それぞれが言えない傷み、悩みを抱え、日々は止まることなく巡り続ける
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