第1章

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  「退院おめでと~」 「ありがと。もう病院て本当暇。ゆっくりできたけど」 双子の家 美優、葵が集まり、双子の両親と共に6人で食卓を囲んだ 「良かったわね、すぐ退院できて」 「うん、2人ともお見舞いありがと」 「ううん、当たり前でしょ、美優も葵も家族みたいなものだもの」 その言葉に顔を見合わせ、両親が頷き、笑う そして詩織、幸斗が一緒に微笑む それに俯くのは美優と葵だけ 「…あんまりにもヒマだったから、曲作りまくったし。バンドまた再開しようね」 美優の言葉に葵、詩織が微笑む 「俺も入れてよ」 「メンバーはもう足りてるよ」 「幸斗はダメね~足手まといになっちゃうじゃない」 「葵、母さんまで」 笑いの絶えない食卓、家庭 ここに来るといつも居づらくて涙が出そうになる 古傷が何度も何度も疼いて いつものように客間に詩織、美優、葵、3人並んで横になる 目が覚めたら、あの日常に戻る ワンフロアーの広いマンションの一室に葵以外の人の気配はない 生活感のない部屋に浮き上がるように笑うカップルの写真 15年前から何も変わらない部屋 住宅街に建つ2階立ての一軒家 「ただいま」 ここにも美優以外の気配はない 奥の襖を開け、正座し、手を合わせる 仏壇には笑う両親 ガランとした2人の家にあるのは静寂と孤独だけ
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