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「あれー?」
「どうしたんです?」
「コンタクト落としちゃったみたい」
「どっちの?」
「ICチップの方。私、視力は良いの」
「頭は悪いんですね」
「ムカつくけど否定はしないわ。でも困ったなあ……期末テストの為に『ケッペンの気候区分』のデータを入れたばかりなのに。無駄に小さいから見つからないのよね」
「探すの手伝いましょうか?」
「うん、お願い。あ、踏み潰さないように気をつけてね」
「わかってますよ」
「それにしても、コンタクトICって落ちやすいよね」
「耳の後ろに差し込むだけですからね」
「もっと落ちないように出来ないものかしら?」
「あ、いま手術で出来るらしいですよ。ただ、まだ保険が効かないから高額だって話ですけど」
「はあー……いつの時代も、世の中は金ってことね」
「そうですね」
「今探してる、512テラバイトのコンタクトも結構したし」
「最新じゃないですか」
「そうよ。先週発売したのだもん。5時間並んでやっと買えたんだから」
「すごい根性ですね」
「まあね」
「でも不思議ですよね。なんで新製品っていうと、お店まで行かないと買えないケースが多いんですかね? ネット販売にしちゃえば、5時間も並んでいたりとか無駄なカロリーを使わなくて済むのに」
「さあ。昔の名残じゃない?」
「名残ってのも、また漠然とした表現ですね。具体例をあげると?」
「……それを、IC落とした私に訊くわけ?」
「ええ、おバカになった沢村さんはどんな返答をするのかなあと、思いまして」
「こんのドS! 貴様のオイルは何色だあ!」
「わ、わっ! 沢村さん! あんまり暴れるとコンタクト踏みま――」
――パキッ。
「あ」
「あ」
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