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「今、なんと……?」
「皆が苦しんでおるのです。ですから、貴方様に助けを──」
「一体、何が皆を苦しめておるというのだ……?」
狼狽えて尋ねた皇子には、今まで暗い影を落としていた赤兄の瞳が光った気がした。
「帝には三つの失政がございます。大いに倉を建て民の財を積み集めたのが一、長く溝を掘って公糧を損費したのが二、船に石を載せて運び丘にしたのが三、です」
「要するに、無駄遣いか……」
「ええ。民はたいそう苦しんでおります」
「財を集め、それが無駄遣いされているとは……」
皇子は顔をしかめる。
「で、そなたは私にどう民を救えと言うのだ?」
「そこで私は、帝と皇太子様を倒し、貴方様に皇位に就いていただきたいと思ったのです」
さて、どうしたものか……。
父上は私に、皇位に就くなと仰った。
私はそれを守りたいが、力の無い民のためなら私が皇位に就いて良い政治をするべきかも知れない。
それに。
よくよく考えると、父上は皇后様や家臣たちがいなくなったことが原因で亡くなったのだ。
彼らを連れ去ったのは、帝と皇太子様。
これは、父上の敵討ちになるのではなかろうか……?
「よし、分かった。私も兵を出そう。そなたに協力しよう」
「ありがとうございます!何とお礼を申し上げればよいものか……。民も喜びましょう」
赤兄は、また相談しようと約束し、喜び勇んで帰路についた。
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