第一話 椎葉

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「え、ええ。ここは松で有名な場所でございます」 兵が愛想笑いしながら松のある方角を指した。 「磐代の浜松……」 虚ろな目が浜松をじっと見るので、浜松に何かあるのか、と兵たちは皇子と浜松を見比べた。 暫くすると皇子の口が開き、辺りに凛とした声が響き渡る。 家にあれば 笥(ケ)に盛る飯(イヒ)を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る 兵たちはまたざわめいたが、皇子がもう一首歌を読むと、辺りはまた静寂に包まれた。
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