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霜月九日。
「そなた、本当に暗殺を企てたのか?」
皇子は牟婁温湯に到着してすぐ、皇太子の元に連れられ、直接尋問を受けた。
「答えぬということは企てたか」
皇子はずっと下を向いていた。
「方法は?」
「いつやる予定だったのか?」
など、様々な質問が投げ掛けられたが、皇子は全て黙って俯いたまま。
苛ついた皇太子が、怒りを抑えながら訊いた。
「では、何故私と帝の暗殺を企てたのだ?」
皇子は顔を上げると、血走った瞳を皇太子に向け口を開いた。
「天と赤兄だけが知っているでしょう。私は何も知りません」
「貴様……!」
皇太子は皇子の胸ぐらを掴んだ。
皇子はただ皇太子を睨み付け、皇太子が殴ろうとしたのを見ていたが、やがてまた俯いた。
皇太子は振り上げた拳を臣下に止められ、乱暴に手を離した。
「貴様、己がやったことの重大さをしかと覚えておけ!」
皇子は乱暴に突き飛ばされ仰向けに仰け反った。
その体勢のまま、皇子は皇太子を見送った。
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