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皇子の元を離れて暫くすると、皇太子の怒りも収まってきたように思えた。
「絞首刑だ……」
「はい?」
背を向けた皇太子の呟く声に、臣下は聞き返した。
「彼奴は絞首刑だ。準備にどれほどかかる?」
「明後日にはできるかと……」
その言葉に、皇太子は首だけ臣下の方を向いた。
「明後日に執行する。準備をしておけ。なるべく都の近くの行ける所まで行って、そこで執行しろ」
「……はっ」
振り返った皇太子の目は、氷よりも冷たかった。
返事をした臣下は冷や汗をかき、身体を震わせた。
この御方に逆らったら……。
そのような恐ろしいことが頭に過(ヨギ)り、また身体を震わせて皇太子を見送った。
暫くして臣下が有間皇子を垣間見た時、皇子は自傷気味に鼻で笑っていた。
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