第一話 椎葉

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「執行致しました」 死刑執行の知らせを聞いた皇太子はほくそ笑んでいた。 「ご苦労」 これで邪魔者は、消えた。 より良い国を作るには、人の命を惜しんではならぬのだ……。 報告が終わり戻ろうとした臣下の者が見たのは、頭を抱え複雑な表情をした一人の男の姿であった。 その知らせは蘇我赤兄の元にも届いた。 皇太子とは違い、赤兄は安堵していた。 殺して良かったものか、ずっと迷っていた。 ──皇太子様に逆らってはいけないのだ。 そんな気持ちでこの計画を進めていた。 ──人を陥れるのは嫌いだ。 ──しかし、致し方ないことだったのだ。 赤兄は牟婁温湯の方を向くと、膝をつき手を合わせた。 ──どうか許して下さい。 この時、赤兄も皇太子も知る由(ヨシ)は無かった。 皇太子の孫が同じ運命を辿ることを。 赤兄の孫娘で皇太子の娘がその痛みを味わうことを。            <fin>
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