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その晩のこと。
暗い部屋に、男が二人いた。
僅かな灯りで、一人が立って屋敷の外を見ていて、残りの一人座っているということを見てとれる。
立っているのは皇太子か。
「彼奴(アヤツ)を操って、謀反を企てるように唆(ソソノカ)せろ」
「畏まりました。して、どのように?」
男が首を傾げると、皇太子が振り返り、男をまじまじと見た。
「彼奴は正義感が強いからな。私と母上が失政をやっているとでも言っておけ。お前の器量であとは何とかしろ」
「失政……?私には、そのような事例が思い浮かびませぬが……」
皇太子が男の言葉に鼻で笑った。
「それは世辞か?」
「いいえ、とんでもない」
「まあ、いい」
皇太子は膝を折り、口を男の耳に近付けた。
「──分かったか?」
「はい。この三つですね」
「ああ。くれぐれも失敗の無きように」
男は深々と頭を下げた。
「頼んだぞ、赤兄──」
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