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僕は雑居ビルの屋上に立っていた。
どれくらいそこから下を覗いていたかは分からない。
ずいぶん長い時間の気もするし、ほんの1、2分だった気もする。
既に日は沈みかけ、ビルはその影を深く地面に刻み付けていた。
僕はその地面を見ながら鉄柵に寄りかかり、時折吹く強い風に目を細めていた。
この誰も居ないビルの屋上に一人で佇む高校生というのは、端から見れば今にも鉄柵を乗り越えて乾いた地面に飛び降りそうな自殺志願者だろう。
まさにそうなのだ。
僕は死ぬつもりでここに来た。
この廃ビルはもうすぐ撤去されることが決まっている。
そう、クレーンやらブルドーザーやらの重機で壊され、跡形もなくなるのだ。
僕はそれに惹かれてこの場所を選んだ。
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