二人

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僕が再び俯いてこの場を切り抜ける策を考えていると金髪の女が更に話しかけてきた。 「ところで、こんな所で何してるの?」 僕は咄嗟に浮かんだ言葉をそのまま紡いだ。 「わ、私ここの屋上が好きなんです」 我ながらなんて説得力のない言い訳なんだ。 それに、勢いに任せて敬語で喋ってしまった・・・・・・ 舞川梨恵が普段からこの人に敬語を使っている事を期待するしかない。 「そうだったの!?私もこのビルの屋上好きで時々景色眺めに来るのよ」 今日みたいにね、と金髪女は人懐こい笑顔を見せた。 反応を見る限り、敬語で正解だったようだ。 話しも奇跡的に合致した。 僕はホッと息を吐いて安堵の表情を浮かべて言った。 「じゃあ、一緒に屋上へ行きましょう」
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