二人

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女が階段を上がるのを待って、ノブを回した。 優しい風と眩い光が嬉しい。 僕は新鮮な空気をおもいっきり吸い込み、深呼吸をした。 女も僕の横に立ち、同じように胸を膨らませた。 「はぁ~、気持ちいいわぁ。やっぱりここはいいわ」 僕は笑顔で頷き、女性をまじまじと見た。 綺麗な人だ。 服装や髪が派手なのを除けば僕の好みなのだが・・・・・・ 今となっては好みなど意味をなさない。 どうせ僕は天国行きだ。 僕が顔をしかめていると女が静かな口調で言った。 「あら、先客みたいね」 僕はここに来た目的を思い出し、女の視線を追った。 その先に、僕らに背を向けて空を眺める『僕』がいた。
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